2つの大国、インドと中国に挟まれた九州ほどの面積を持つ小さな国「ブータン」。敬虔な仏教国で、小さい国ながら、独自の文化と伝統を守りながら、世界では目立つことなく、穏やかにそして唯一の存在として存在する国です。「Hi Value,Low Volume」を政府のモットーに、レベルの高いおもてなしと観光客の数をむやみに増やさないことを目指し、旅行者を受け入れています。寺院やゾンなどの建物の他に、ブータン人の素朴さ、雄大な自然が、旅行者を楽しませてくれます。ビーチやお買い物、グルメなどのご旅行に飽きた方は、ぜひこの独特の雰囲気を持つ「ブータン」という国を見にいらして下さい。

名 称 : ブータン王国 (Kingdom of Bhutan) ゾンカ語ではドゥルック・ユル(Druk Yul / 「雷龍の国」の意
面 積 : 38,394k㎡( 九州の約1.1倍、南北150km、東西300km )
人 口 : 約70万人
首 都 : ティンプー ( Thimphu )
言 語 : ゾンカ語(公用語)、英語(教育用語) その他少数言語を含め19言語が話されています
国 教 : 仏教
国 花 : ブルーポピー
国 技 : アーチェリー
通 貨 : Nu( ヌルタム または ニュートラム )インドルピーと等価(例 100インドルピー=100Nu)となり、インド紙幣もブータンで使えます

 東部、西部、南部はインド、北部は中国チベット自治区に隣接しています。上は中国、下はインドに挟まれていると考えると分かり易いでしょう。北部にはヒマラヤ山脈が連なり、国土全体の標高幅は海抜100m(南部)~7,500m(北部)ですが、国土の大半は標高2,000m以上の山地です。沖縄とほぼ同じ経度です。

 国土の72%以上が手付かずの森林で覆われています。“もし1本の木を切ったならば、2本の木を植えること”を義務としています。世界の中で生物多様性が豊かな10箇所のうちの1つ、また、地方特有の鳥がいる221箇所のうちの1つであると、認められています。およそ770種の鳥が生息し、50種のシャクナゲ、様々な種類の薬用植物、ランなどが生育しています。バードウォッチングや植物観賞を趣味とされている方も十分に楽しめる場所となっています。また、ポブジカの湿原には毎年500羽ほどのオグロヅルが飛来し、観光名所の1つとなっています

 大きく3つの気候区分に分けられます。インドに隣接しているプンツォリンなどの南部は湿気が多く、高温です。主な観光地となるパロ、ティンプーなどの西部は、四季があり比較的過ごしやすい気候です。西部では年に数回、雪が降ります。プナカはパロ、ティンプーに比べて温暖な地です。北部は高山気候で、万年雪に覆われています。6月~8月は雨期となりますが、時期に関わらず旅行者の数は減ることはありません。ティンプーやパロのこの時期は、毎日雨が降ることはなく、午後から短時間に降って晴れるパターンが多く、観光に大きな影響はありません。また夏の時期を除き、昼と夜の気温差が激しいため、日が落ちる時間帯は気温が下がります。春、秋でも上に羽織る衣類をご用意されることをおすすめします。また、1年を通して峠付近(ドチュラ峠、ペレラ峠、ヨンプラ峠など)は気温が下がるので、峠を通過する場合は寒さ対策をしましょう。

 ブータンでは、男性が「ゴ」、女性が「キラ」という民族衣装を普段着として着用します。年齢や住む場所によって、そのコーディネートや生地のデザインは様々で、旅行者の目を楽しませてくれます。近代化が進むティンプーやパロでは、若者たちがジーンズにTシャツというラフな服装で町を歩く光景が多々見られますが、ゾン(城塞)や政府関係の重要な建物に立ち入る際は、ブータン人に対し民族衣装の正装が義務付けられています。旅行者の服装に対しては特別な規制はありませんが、ゾンや寺院などの建築物を見学する際は、肌の露出が多い衣服は避けたもので、手首・足首まで隠れる衣類の着用が決められています。ビーチサンダルや極端にヒールの高い靴、帽子も避けましょう。

 「ご飯+肉や野菜の料理」が基本的なメニューとなります。日本のようにバラエティー豊かな料理ではありませんが、どれも食材を生かした素朴でシンプルな味付けです。ブータン料理に欠かせないのが、「唐辛子(チリ)」です。ブータンでは調味料ではなく、「野菜」として料理に使用されます。多くの料理に唐辛子が使われていますが、特に唐辛子とチーズを煮込んだエマ・ダツィはどの家庭でも出される代表的な家庭料理です。
旅行者に対しては、ホテルのレストランや外国人旅行者向けのレストランでは、辛さをなくした料理がメインとなり、食べやすいように調理されています(ビュッフェ形式です)。辛いものがお好きな方は、ぜひブータン人が普段食するエマ・ダツィを試してみてはいかがでしょう。民家にてお母さんの家庭料理(ブータンの伝統料理)を召し上がることもできます。また、日本では高級食材とされている松茸が、ブータンの一般家庭の裏山でのびのびと生育しています。パロでは7月~9月が旬となっています。この時期にいらした方は、ぜひ松茸をお楽しみ下さい。

 「ツェチュ」と呼ばれる宗教的舞踊祭が、ゾンや寺院にて一年を通して各地で特定の時期に行われています。仏教にまつわる仮面舞踊や寸劇が朝から披露されます。ツェチュのために、数週間前から僧侶や地元の青年たちが練習をし、当日地元の観客や旅行客を楽しませてくれます。音楽に合わせた伝統的な踊りや、言葉が分からなくても観光客が理解できるような面白おかしなコントや、観客の間に入ってふざけるパフォーマンスなどもあります。春のパロツェチュ祭の最終日には、寺院の外壁いっぱいにグル・リンポチェの大仏画(トンドル)の御開帳があり、早朝から人々はその御開帳を待ち、大仏画に触れ、無病息災を願います。このツェチュのために、民族衣装を仕立て、お弁当とお茶のポットを持って、朝早くから一家総出でツェチュが開かれるゾンや寺院に向かいます。ブータン人のきらびやかな装いも必見です。

 昨今、世界そして日本でも注目され、研究対象にもなっている「国民総幸福量(Gross National Happiness:GNH)」は、1976年に4代国王ジグメ・シンゲ・ワンチュク(当時21歳)の「国民総生産(GNP)よりも国民がいかに幸せを感じるかが重要である」という思想が源となっています。財や物質の豊かさではなく、家族が健康であること、自然と共生すること、相手の幸福を祈ること。ごく身近なことが自分の幸せにつながり、それが国の幸せにつながる、というブータンの人々の思想を感じることができます。電気が通らない小さな村に住む人々は、それを決して不自由とは感じず、逆に電気がなくても困らない生活をしています。「経済的な幸せ=人生の幸せ」と考えないブータン人の思想を、旅を通して感じてみてはいかがでしょうか。

 1970年代に外国人観光客の受け入れが始まりました。それまではほぼ鎖国状態でした。アメリカ、イギリス、日本、中国からの旅行者が多く、2017年の国際とされる旅行者数(インドなどからの旅行数を除く)は約71,000人でした。そのうち日本人観光客は約2,700人でした。カルチャーツアー、トレッキングツアーをメインとしたツアーを通じて多くの旅行者が、ブータンの文化、伝統、自然を満喫することができます。観光は環境、文化、生態に優しいものであるという政府の方針の下、「公定料金制度」を用いて観光ビザを発給しています。現地あるいは海外にある旅行会社を通して旅程を組み、1泊に対し定額料金(=公定料金)を払うことで政府から観光ビザが下ります。この公定料金には、1日のホテル、食事、車、ガイド、入館料が含まれています。政府は今後、観光客の受け入れ数を増やす方針をとっています。
 現在、ブータンへの入国・出国ルートはパロ空港を利用した空路ルートと、インドとの国境沿いにある南部の都市プンツォリン、ゲレプ、サムドゥプ・ジョンカからの陸路ルートが可能です。

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